きみのァウ(11)





「おはよー、ありがとね?」
「・・・・・カカシ、さん?」
「元気になったよ」


気づけば逆だった。がカカシのベッドで寝ていて、カカシはしゃこしゃこ歯を磨いている。慌ててベッドから抜け出してカカシに駆け寄った。


「熱は!?」
「下がった下がった」
「うそ、だって・・・・!」
「ほんとだよ、朝も熱はかったし」
「でも、」
「こういう熱は甘く見ちゃいけないなーって改めて感じたよ。じゃ、これから任務だから」


そういうと、歯磨きを終えてカカシは玄関で靴をはき始めた。洋服が昨日のままで、はあのままベッドの傍らで眠ってしまったらしい。そんなことなら起こしてくれれば良かったのに、と内心悔しい気もするがカカシの親切は素直に受け取っておく。


「じゃ、行ってきます。今日中には帰れると思う」
「いってらっしゃい、カカシさん」
「・・・・・・なんか新婚さんみたいだねー?」


そのまま茶化してカカシは家を出てってしまった。―――混乱する。親切なのか、優しいのか、怖いのか、たまに解らなくなってしまう。原作ってどんな感じだっけ、と思い出してみても、ほとんどカカシの顔しか浮かんでこないのは相当重症だろうか。


「・・・・・ずるいひと」


そのまま出勤の準備に取り掛かった。





木の葉で過ごすその後の1ヶ月はあっという間だった。相変わらずカカシに押され気味が続く。任務帰りなのにあの体力のありようはすごい。タフだ。チャクラが無いのなら忍術は使えないし、帰りたくても帰れない。ここは素直にうち明けて置くのが妥当なのかもしれない。―――でも、本当にその判断が正しいのか迷う。気持ちが揺らぐ。頭の中がいっぱいだ。


「それって、の考え込む癖?」
「ちが、って、カカシさん、お帰りなさい。・・・・いつの間に?」
「ついさっきかな?ずっと座ってぼーっとしてるから声かけづらかったけど」


ごめんなさい直ぐ夕食の準備をします、とは席から立ち上がるが、カカシの右手がストップをかける。そのまままた腰を下ろして椅子に座る。カカシはにっこりと笑ってエプロンを着始めた。どうやら、今夜はカカシのお手製を頂けるらしい。


「最近迷惑かけてるからね。今日は早いし、俺がつくるーよ」
「・・・・・・・何を」
「何にしようか、何が食べたい?」


―――無計画でしたか。カカシは適当に冷蔵庫をあさる。料理は専らの専門なので一応冷蔵庫は綺麗に突っ込んでいるつもりだ。


「ま、ここはシンプルに焼きうどんでオッケー?」
「別に構いませんが・・・・・」
「なに、その疑いの眼。一応自炊はしてたし、けっこうおいしーよ?」


冷蔵庫からうどんを取り出して鰹節やらなにやらフライパンを温めながらてきぱきと料理をしていく。はその間、差し出されたコーヒーと一緒にリビングのテーブルで待つ。


「でさ、
「何ですか?」
「答えは変わってくれないのかと思って」


なんの、と聞き返すほどの頭も間抜けではないつもりだ。告白されてからと言うもの、いろいろとアプローチ(?)をされて、カカシに揺らがない人はいないと思った。でも心のどこかで自制する。彼は、現実にはいない、自分と一緒でも幸せになれない人なんだと。これで何回目だろう。この話を吹っかけてきたのは。飽きない人だな、と思う反面今すぐ抱きつきたいという気持ちもどこかしらある。それでも、ずっと断り続けてきた。―――一線は、引いておくべきだと。


「変わりません」
「俺のどこが嫌?」
「嫌って訳じゃないんですけど」
「じゃ、試しに付き合ってみるってのも有りだよ?」
「・・・・・・それは、ちょっと」


ちょっとって何、とカカシが苦笑する。


「カカシさんこそ、私のどこがいいんですか」
「んー、聞きたい?」
「・・・・・・・いえ、やっぱりいいです」


うどんの美味しそうな香りでも堪能していないと、うっかり何か言いそうだ。


「そこは聞いて欲しいんだけどー」
「いいです、遠慮します。・・・・・とにかく、駄目ですから」
「そっか、じゃあしょうがないよね」


またチャレンジするよ、とこれもまた何度聞いたことなんだろう。いい加減諦めればいいのに、とは心の中で呟く。


「じゃ、お皿出してくれる?」


は席を立ち上がった。




今すぐにでも隣にいて、手が届くのなら、声が聞こえるのなら。こんなにどきどきする事も経験できなかったのだろうか。カカシさんが何を考えているのかわからない。でも、知りたいとも思わない。今が、幸せ。それで十分じゃないのか、とどこかで問う声がする。それでも胸が詰まる。いつのまにかカカシさんのことで頭がいっぱいだ。どうしよう、どうしようもできない。伝えたいのに伝わらない。―――伝わるまで、伝わらないで。矛盾した考えが頭を過ぎる。
こんなにも。


狂おしいほど、あなたが好き。






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20080328
(甘々の要素が抜け気味な気が!汗)