きみのヴァウ(狂おしい恋) お帰りとやけにカカシの声が耳につくのは、周りに誰もいないからだ。 「お帰りなさい、。仕事、随分遅くまでやるんだね?」 もう11時回ったよ、と何気なくカカシはぽつりと呟いた。春になったとはいえ、まだ寒い北風が時折吹くこの夜中だ。もしかしてずっと待っててくれたのだろうか。 「カカシさん・・・・・」 「んー?」 「もしかして、ずっと待ってたんですか?」 「さっき来たばっかだから、へーき」 と言いつつも、カカシの両手はポケットに突っ込まれていた。手を出して、とが言うとすんなりカカシの手はポケットから出されたが、かなり冷えきっているようだった。思わず温めようと握り締める。 「嘘つきは、嫌いです」 「嘘ついてないよ。俺にとってはさっき」 時間単位で言うと2時間ぐらいだし、とカップラーメンでも待ってるような言い草だったのでとっさには噛み付いていた。 「お願いだから、平気とか、言わないで」 「どうして?・・・・あと倍は待てたのに」 「心配、だから。・・・・・こっち側の身になったことある?」 ごめんなさい、と笑いながらカカシは行って、額をの額とこっつんこさせる。額宛が冷たいが、カカシの吐息が目の前にあってそれどころではなかった。 「どうしたの?」 「どんな姿、でも、」 私がどんな姿であってもカカシさんは嫌いにならないでくれますか、と言いかけてひっこめる。もし、自分が異世界の人間であっても、化け物であっても、その思いは、変わらないでいてくれますか。――――最近は、そればかりが浮かんでは消え、浮かんでは消え。 「続きは?」 「なんでもないです」 「ずるーい、それって何か、おあずけされた気分」 じゃあ言いたくなったら言ってね、とカカシは微笑んでの手を引っ張ると帰路へつく。歩幅はに合わせ、遅すぎず、速過ぎず。 「・・・・・・・カカシさん」 「ん?」 「いつも、ごめんなさい」 それはもう聞き飽きた、と言いたそうな顔だがカカシはそんなことないよと優しく言う。 「言うべき時になったら、ちゃんと言います」 「知ってる」 「優しいんですね」 「言いたくても言えない側なら何度か経験したことあるからね」 だから、と離さないように、約束のように、偽りのように、優しさのように、束縛のように。 「好きだよ、どこでも、いつも、のこと想ってる」 その笑顔を、守りたいから。 -------→ 20080403 (途中のエピソードとして。決意と約束) |