きみのヴァウ(10) 何で、やどうして、がどこかへ消えてしまった。 カカシさんは何も聞かないから、私も何も言わない。それだけで終わって結局するりと去ってゆく過去。いいのかなぁなんて思ってても結局時間は過ぎていく。―――人類の敵は今のところ永遠に時間だとも思う。 「どうしたの?そんな思いつめた顔して」 気が付くと、カカシの大きな瞳が目の前にあった。手にはいつもの本。任務服ではなく、家の中なので普段着だ。は、恥ずかしそうに目をそらす。 「ちょ、顔が近いですってば」 「んー?・・・・あ、そう、ごめんね」 「・・・・・て、離す気ないでしょう。人の話聞いてました?」 「聞いてた聞いてた」 にっこりと笑ってカカシは言うが、内心聞いてただけでそのまま通り過ぎたのだろう。最近のカカシはにべたべただ。何をどうしたらここまで近寄れるのかわからない。―――一緒の部屋にいるだけでも、ドキドキするようになってしまったのに。 「彼女さんはいいんですか?」 「え?別れたよ?」 「・・・・・・なんでそうあっさりと・・・・・」 「どうしてだろうね。俺の付き合うひとって結構長続きしないんだ」 それはモテる人の言い分だったので、ふに、とは右頬を遠慮なくつねる。いたい、と言いながらもカカシは笑う。 「紅さんにも聞きましたよ。最長2週間ですって」 「・・・・・・・そんなことないよ?」 「何ですか、その間は」 思い出してた、とこれまた嘘見え見えにカカシは微笑む。 はため息をついて椅子から立ち上がった。 「寝ます」 「じゃあ俺も」 「・・・・・・・・先に風呂入ってから」 「じゃあ待ってる」 はだん、と遠慮なくテーブルを叩いた。反動で置いてあったマグカップのコーヒーが揺れる。 「・・・・っ・・・・・いい加減にしてください」 「してるつもりだよ。ほら、風呂入っておいで?」 「いちいち私の言動に文句言わないでくださいよっ」 「言ってないよ?」 「人のあげあしとらない!」 あげる方も悪くない?とカカシはあくまで嬉しそうに言い返す。 「もう、知りませんっ」 はそのままタオルを乱暴に出して着替えと一緒に風呂場に行ってしまった。カカシは先程のがぼーっとしていた間に済ませてしまったので、部屋で待つことにした。――――それにしても。 「どうしようかなぁ」 カカシは嬉しそうに呟く。 3日前、カカシはに告白した。好きだ、付き合ってほしい。と至ってシンプルに。結果は保留になるかと思ったが、その場で振られた。いつも振る方の立場に立っていたので、なんとなくそのショックも味わった。諦めないからね?と宣言してから3日目。とうとうが逆切れし始めて、一日中つんつんしている。それは勿論自分の所為だが、怒ってるを見るのも嬉しい。 なんてね、とまたカカシは呟いて、静かにベッドに腰を下ろした。 「いいじゃない。付き合っちゃえば」 カカシに告白された翌日、紅にその話を持ちかけると、意外とあっさりした答えが返ってきた。数日間だったが、住まわせてもらったお礼の為に訪れた時の事だ。 「・・・・・でも、それってなんか軽い女に見られそうで・・・・・」 「あいつ自体が軽い男だしね」 もちろん、カカシに対しては容赦ない。 「好きなら好きって言えばいいのにね。どうしてこじれるんだか」 「カカシさんは本気じゃない気がします」 「本気にしちゃえば問題ないじゃない」 ぐさりと痛いところを突いてくるが、紅曰く、カカシ程度だったらそれぐらいがいい、らしい。淹れてもらったコーヒーはインスタントだったが、カカシの家とは違う豆を使っているのでこっちにしようかと内心ぐらついていたところだ。 「・・・・・・・・・・恋って苦いですね」 「甘い恋も結構面白くないわよ」 「うわぁ、それってなんかすごく大人の女の人っぽい」 「あらそう?ありがとう。褒め言葉として受け取っておくわね」 褒め言葉ですよ、とが笑う。紅はコーヒーを一口。 「紅さんは、カカシさんをどう思いますか?」 「んー?忍者としては上出来だけど、男としては最低、てな感じ」 「・・・・・・・かっこいいじゃないですか、カカシさん」 「まぁ、一般的に見ればかっこいい部類に入るだろうけど、性格に問題があると思うわ」 「どこらへんが?」 「女をとっかえひっかえする所」 漫画のほうではカカシさんの恋愛事情は触れていなかったので良くわからないが、カカシさんはそういうタイプだったんだ。・・・まぁあの性格から見れば妥当なところだろうけど。 「最長2週間ぐらいだったかな。ちなみに最短は3日。可哀想にね」 「カカシさんモテますもんね」 「あんなののどこがいいんだか・・・」 今頃カカシはくしゃみでもしているところだろう、と思うとはぷっと堪えきれずに吹き出した。 「そのうちわかるわよ。でも今のうちに手ぇ切っとくのがおすすめかな」 「・・・・・・・・それでも好きなものは仕方ないですよね」 「まぁ、そこら辺の感情は私が左右するべきものじゃないしね」 その後少し雑談をして御礼をしたあと、荷物を持ってうちに帰った。 紅さんはぶすぶす差すようだけど、とても頼りになる。やっぱり諦めた方がいいのかと考えてる最中にあの態度だ。しかも最近は日帰りの任務が多い。・・・・ナルトくんたちの班の指導かな。 「・・・・・・・・あがろう」 これ以上考えてても埒が明かなかったので、潔く風呂から出ることにした。タオルで適当に髪を拭いた後リビングに戻る。 「あれ?」 カカシがベッドの上で一足先にお休みをしていた。きっと任務で疲れたんだろう。毛布をかけようとしたところで、ふとの手元が止まった。 「カカシ、さん?」 熱い。 カカシの体が熱かった。額に手をあてると、あきらかに熱い。 「カカシさん、熱ありますよ!?」 「ん・・・??」 最近になって何時の間にか呼び捨てになったが、改めて色っぽい声で言われるとどきっとする。――――じゃなくて! 「どうしてカカシさん言ってくれないんですか!?待っててください。あー、湿布とか。それよりも布巾とかでいいのかな?薬ってどこにしまってありますか?それより布団中先にはいって、」 「落ち着いて、。大丈夫だから」 「どこらへんが!?」 「はい、深呼吸」 病人になだめられるっていう光景も初めてだ。は深呼吸を2、3度繰り返して改めてカカシに目線をもどした。 「よくあることだから、へーき」 「チャクラの使いすぎ?」 「ううん、写輪眼のほう」 「そんな無茶して使わないでください!」 「寝てれば治るよ」 「・・・・・・じゃあ、何かして欲しいこと」 ぐいっと、体ごと抱きしめられて、は身動きが取れない状態になってしまった。呼吸が荒くて何が大丈夫なんだろう、と半泣きしたい気分だ。それに、胸がドキドキどころじゃ収まらない。 「ちょっとだけ。冷たくて気持ちいい」 「でも」 「おねがい。眠ったらその後額を冷やしてくれると嬉しい」 結局そのままカカシは眠りについてしまった。 ―――無理を平気でする人なんだ。 カカシが寝たのを確認した後、はカカシの希望通りにタオルで頭を冷やした。 -------→Next 20080324 (らぶらぶっていうか、一方的っていうか、一方通行っていうか・・・) |