きみのァウ(8)





前は会えただけでも嬉しかったのに、今では会うのがつらい。
姿を見るだけでも何かが体を蝕む。一線を越えるな、と。


紅の家に転がり込んでから7日。カカシとは全く顔を合わせていない。あんなめちゃくちゃなこと吐いて平然としていられる方が異常だ。こっちから切ったのに。


「ただいまー」
「・・・・おかえりなさい」
「大丈夫?」
「はい」


今のところは、とが付け足すと紅は良かったねと微笑んだ。カカシよりも少し小さめのアパートの一室が紅の家で、カカシの家よりも少し遠くに位置している。


「・・・・・カカシならそろそろ任務から帰ってくると思うけど」
「そうですか」


気を利かせた紅がそう告げるが、相変わらず凹んだ返事。仕事には復帰したもののミス多発。調子狂うなんてことはなかったので少しだけがっくりくるところもある。


「意地張ってないで仲直りすればいいのに」


真っ当なアドバイスだったがどうも顔をあわせづらい。


「・・・・・・・・喧嘩じゃなくて、私が悪いんです」
「そう?あいつもあいつで言い方ってもんがあったと思うけど」
「カカシさんは悪くないんです。・・・・・なんて」


私は傲慢ですか。好き。好きになって欲しい。でも言葉と行動と気持ちは裏腹。


「へこんでたって何も変わらないと思うわよ。あたるだけあたってみたら?」
「振られるのが目に見えてるので嫌なんです。だったらこのままでいい・・・・とか」


まぁ、別にそこまで押せとは言わないけど、と紅は引っ込む。どうしようもなくて結局黙ってしまった。しばらくのあと、とりあえず夕食でも作ろうかと言う事になった。







「・・・・・・ない」


カカシは、里の住民登録を見る。という名前はあるものの、年齢が明らかに違うか、確認をとっても本人はちゃんといた。それ以外に旅行者等の記録を見ても全くその人物が出てこなかった。そろそろ親が届け出てもいい頃なのにそういうものは一切ない。任務から帰った後思い出して本を片っ端から読み倒していく。


「どういうこと?」


ついでに、戸籍もないとすればあの少女は何処から来たのだろう。困った、と呟いてカカシは本を閉じる。


何が起こっているのだろう。


本人に聞くのが一番手っ取り早いが、今は一方的に嫌われてる様子だ。とりあえず、紅にでも連絡を取ろうと、報告書をチームのメンバーに押し付けカカシは帰宅した。







「あ、ちょうどいいところに、ちゃん!」
「紅、さん・・・?」


次の日の午後、買い物帰りの紅が荷物を両手に駆けて来たので、はそれを半分請け負った。主に食材が中心だが、カカシの時とは違いちゃんと野菜もバランスよく買っている辺り、流石。二人は並んで歩き出す。


「ごめんね?持たせちゃって」
「いえ・・・・って、今日は何を作るんですか?」
「出来てからのお楽しみ」


じゃあ楽しみにしておきますねとは笑う。


「ねぇ」
「はい?」
「単刀直入に聞くけどいい?」
「何がですか?」
「・・・・・・・ちゃんって本当に家出してきたの?」


そろそろ切り出してくることは十分予想できた。一ヶ月近くの居候。親の在所がつかめない少女となると、上忍の対処も早いから、むしろもっと早くバレるだろう、とは思っていた。それでもこんなにさらっと言われるとは思ってなかった。悪ければ尋問行きのはずなのに。


「・・・・・それが人に物を尋ねる態度ですか?・・・・カカシさん」
「・・・・・・・・・」


ぽんっと音がして、変化の術が解かれる。予想通り、そこにカカシがいた。ばつの悪そうな苦った表情でこちらを見つめる。


「どこら辺から俺だって気づいた?」


久しぶりに見る、私の好きな人。




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20080315
(紅さんが紅さんじゃなくなってる・・・)