きみのァウ(5)





結局帰ってこれたのは真夜中だった。
3日ぐらいで終わるかと思ったが、意外と(自分ではないが)てこずったので帰ってこれたのは約束の3日ではなく5日の真夜中だった。当然のように家に電気は付いておらず、真っ暗な中部屋の中を歩く。やっぱり彼女はソファで寝ていた。


「・・・・・・・・ただいま」


小声で言ってみるが、は起きない。くーくーと可愛い吐息が聞こえてきて、手を伸ばすが理性が邪魔して直ぐに引っ込める。何故かそういう衝動に駆られるから、なるべく会いたくなかった。だからなるべく任務を入れておいたが、結局急いで帰って来る自分がいた。どこの誰かもわからない、不思議な少女なのに。


「・・・・っと」


寒そうなので自分のベッドに運ぶ。ソファの上では丸く寝る癖があるらしく、抱き上げるのに一苦労だ。思ったより軽くて、本当にご飯を食べているのか聞きたくなるくらいだ。カカシがベッドから離れようとすると、に袖を引っ張られた。


「カカシ・・・・さん・・・・・?」


目がうっすらと開いている。今の動作で起こしてしまったらしい。そのまま起き上がって目をこする。


「ごめーんね?起こしちゃった?」
「・・・・・大丈夫です・・・・・・。それより、お帰りなさい」
「ただいま」


2度目のただいま。そのままベッドに腰掛けると、カカシの袖からの手が離れた。


「・・・・・・少し、心配しました。任務で何かあったのかなって」
「大丈夫だよ?少してこずっただけだからー」
「・・・・・カカシさんでもそんなことあるんですね」
「俺じゃなく班のやつがね」


と、自分の失敗は棚に上げておく。は面白そうにクスクスと笑う。


「そういえば、職見つかったんだって?」
「はい、近くのところで」
「そっか、良かったね」
「でも、お金たまるまで・・・・・」
「別にいいよ。むしろ掃除とかしてくれてるからすごく助かる」


実際細かい所まで見ていてくれて、何より冷蔵庫の中のつまみぐいできる食料が増えた。家に帰ってきても、ほこりも散らないし、食べっぱなしにしておいても次帰ってきたときには片付いている。


「・・・・・カカシさんと話すのっていつも夜ですよね」
「あー、うんそうだね、ごめーんね?眠いのに」
「別にいいですよ。お忙しいんでしょう?」
「ま、ね」


それもかなり短い時間だ。別に長い時間喋りたいというつもりはないが、少し寂しいという気持ちもする。それでも何故かカカシの隣にいると安心する。


「じゃ、ちょっと風呂入ってくるから」
「・・・・はい。止めてごめんなさい」
「ううん、別に大丈夫だーよ」


そのままカカシは風呂場に言ってしまった。
今日の会話はこれで終了で、きっと目が覚めたらそこにいないのだろう。それがさみしくて、目を瞑りたくなかった。NARUTOの世界に来てしまったけど、現実は辛い。恋愛なんてこれっぽっちも無くて――実際カカシは彼女持ちだったし、何かとショックなことばかりだ。


「でも」


隣に入れるだけで幸せだと思うことは、間違いなく恋なのだろう、とは瞼を閉じた。






だから、恋は苦かった。


「・・・・・・・・ちゃん・・・・・?」


涙が、言う事をきかずにぽろぽろと流れてゆく。泣いちゃいけない、泣いちゃいけないと何度も何度も心の中で念じるが、あっさりと衝動に蹴られる。カカシは困ったような驚いたようななんともいえない顔をしていた。カカシ、さん、と必死に言葉を紡ぐが、持っていた買い物袋と一緒に落ちていく。どさり、と重たい音がした。どうしよう、どうしよう。――――気づいたときには、もう足が走り出していた。こんな光景見たくない、と。


「・・・っ・・・・!・・・・・ちゃんっ!?」


思いっきり駆け出す。涙が止らない。止らない。止らない。止ってくれない。どうして、なんで、これほどショックだ何て、知らなかった。


――――あなたが、知らない女性と楽しそうにいるところが。



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20080305
(急展開をかけてみます)