きみのァウ(2)





少し経って、カカシがおかゆを持ってきた。 梅を綺麗に散らばめて、味付けはシンプルに塩と醤油。 スプーンですくって口に運ぶと、柔らかいご飯の味がした。 カカシが語るには、2・3日目を覚まさなかったようなので、お腹が必死になるのも納得できた。
食べ終えるとカカシがキッチンで食器を洗ってくれた。


結論。
ここは、木の葉の里である。どうやら私はファンタジー宜しくトリップしてきた、が一番しっくりくる。しかし、特に危機感は無かった。


「で、どうしてあそこに倒れてたのか聞いていい?」
「・・・・・・・・よく、わかりません」


ドアの前に倒れていたらしいが、歩いた記憶が無いし、そもそもトリップしてきた記憶すらない。わかるのは名前とそれから異世界から来た、と言う事だが、言うと尋問にでも処せられそうで頂けないので伏せることにした。その後は適当に真実をかいつまんで話す。


「・・・・・・ふうん。あやしいね?」


最もな意見だった。それでもとにかく信じてくださいと言うしかなかった。


「まぁ、別に無害そうだし。問題はないかな。ちなみに行くアテは?」
「ない、です」
「じゃあここにいていいーよ」


随分あっさりとカカシは承諾してくれた。それにしても美味しい展開だ、とは思う。そういえば随分前にクラスでNARUTOが流行り、カカシ先生かサスケくんかでわかれたことがあった。なるほど、カカシ先生がかっこいいと言ってた派の意見も頷ける。 行くアテもお金も無いのでしばらく厄介になる事になり、食事代、生活費は出すよと言われて慌てて手を左右に振って抗議をする。


「いいですよ!・・・・・もう、この年ですし稼げます」
「稼ぐまでの生活費は?別に俺も一応上忍だし、女の子ひとりぐらい養えるから安心して。・・・・・もし嫌なら働けるようになってから返してくれればいいよ」
「なんか、体の良い借金みたいですね・・・・・」
「そこらへんはちゃんの自由」


いつの間にか名前もちゃんに落ち着いていて、別に文句は無いが何か照れくさい。 結局働いて返すと言う所に妥協点を置いて、今は借金生活に勤しむしかないようだった。 バイトでも何でもいいから早く見つけないと。


「ま、たまーに様子見に来るから」
「・・・・・でもカカシさんてこの家に滅多に帰ってこないんですよね?」
「どうしてそう思う?」
「生活感が無い、と言うか、新品のものが多いから・・・・・」


鋭いね、と褒められたのか驚いてるのか解らないがそう指摘される。


「まぁ、今のちゃんに一番大事な事は療養。よく寝て良く食べなよ。・・・・解ったらさっさと寝よう?」


ね、とにっこり念を押されては静かに瞼を閉じた。





結局、次にカカシとが会ったのはそれから5日後の事だった。 顔を合わせるのはこれが2度目だが、3日目に様子を見に来たのか、書置きだけ残して姿は見れなかった。洋服や生活用品のお金は一通りそろえてもらって、お礼も言えないまま気まずい所に、ひょこひょことカカシが帰ってきたのだ。


「・・・・・・・ちゃん、夕飯食べた?」
「あれ?カカシさんお久しぶりです。お金有難う御座いました。一通りは買えました」
「良かったね。でも少し遠慮しがちじゃないー?」
「そんなこと無いですよ、一応養ってもらってる身ですから。・・・・・夕食はまだですけど」
「そ、じゃあ一緒に食べに行かない?」


玄関に靴を脱がないまま座って、キッチンにいると会話をするカカシは、任務服のままだ。大抵の忍は、この格好で過ごしているらしいので外を歩くのに気兼ねはいらない。


「・・・・・忙しい?」
「そうでもないですけど」
「じゃあいこうか。着替えておいで」


ここらへんの「おいで」あたりはまだ自分を子供扱いしているようで悲しい。まあ、6、7歳も年が離れていればしょうがないか、と納得したは着替えを手に取り家を後にした。


「どこにいくんですか?」
「酒酒屋」


上忍が集まるという、例のあのお店。


「ちょっとちゃんに会わせておきたい人がいるんだよねー」


きっと紅さんやアスマさんの事だろう。夕方の6時ごろ、並んだ影は二つ、ゆっくり火の灯る町を歩いていく。さすが木の葉、結構色々お店がある。


「カカシさんは、何のお仕事をしているんですか?」


一度聞いてみたくて、知ったかぶりをしつつ横を歩くカカシに問う。


「忍。一応上忍」
「へぇ、すごいですね」
「ありがとう。一般人の女の子に職業褒められたの初めて」


ここを嘘だとか疑っちゃう私って最悪だなー、と内心ちょっと嫉妬に似た感情が煮えているが、はあえて言わない。余計な口は滑らせないのが吉。


「じゃあはいろっか」


ほんのりと明かりが照らす、酒酒屋へとはカカシの後を追って入った。



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20080222
(ラブが足りなくてあがきたくなってくる)