きみのァウ(1)





任務でくたくただった。
簡単なはずなのに、思ったよりてこずって、あげく部下には「今日は調子悪いんですか?」 気分はどん底に穴を掘ったよりもっと沈んでいて、いつもはなんとも思わない振り続ける雨でさえ、正直言って気に食わない。


「・・・・・・・・・つかれた」


夕食は寝た後で十分、そう思って報告書を班のメンバーに任せてカカシは直で帰路についた。 リズムが一定の毎日。楽しみと言えば何時もの上忍のメンバーで騒ぐ時か、彼女と一緒にいる時か。階段をあがりアパートメントの3階へと上がる。


「・・・・・・・・え・・・・・・?」


とっさに目を見開く。その血を雨が洗い流すように滴る赤。肌は色をなくし、黒髪は乱れてきっと本人に意識があったら即座に直すであろう。


カカシの家の前に、女の子が倒れていた。





誰かが叫んだ気がした。
それが誰なのかは解らないが、直後に体が空に投げ出されたのはわかった。 駅のホームで誰かに押され、何十段もある階段から足を踏み外す。 隣にいる友達はとっさに手を伸ばしたが、それも遅く、次の瞬間にはずきん、と痛みが走りその後も何回か体中に同じような痛みが走った。 その後の事は覚えていない。 誰が背中を押したのかも必死で見えなかった。 ―――――暗転。





こぽこぽと、水が音を立てて沸いている音がした。 瞼を開けると見上げた事の無い天井があったので、は体をゆっくり起こすが、体が悲鳴をあげる。 きっと階段から落ちた衝撃がまだ残っているのだろう、しかし所々応急処置をしたような包帯が巻かれ、固定されていた。


「・・・・あれ?」


高確率で病院のベッドに寝ている予定だったは自分が一般人の家のベッドに横たわっている事を悟る。 部屋にはソファと、テーブルに椅子、側にはキッチンがあり、そこでやかんが吹いていた。 全体的にものが無いのかシンプルな飾り付けで、テーブルには開きっぱなしの救急箱があった。


「・・・・・・火、止めないと」


起き上がって所々傷む関節を黙らせ、キッチンに立つ。 正直、あまり生活感がなく、鍋も箸もマグカップもただ置いてあるだけで新品のようだった。 果たしてここに人が住んでいるのだろうか。


「あれ?起きててだいじょーぶ?」


とっさに声が掛かり、どきりと心臓が一回驚く。 振り向くと銀髪にマスク、片目を隠した、変な格好の男性がにっこり笑ってこっちを見ていた。
―――――私はこの人を知っている。
はたけカカシ。上忍。NARUTOのキャラクター。リアルに見るのは初めてというか、日本全国探しても私だけだろうと少し優越感。 ということはここはその、はたけカカシの自宅。


「けっこう血ぃ流れてたからまだ寝てた方がいいと思うよ?それともお腹すいた?一応好きそうな物選んで買ってきたんだけど。冷蔵庫空っぽでしょ?」


言われて、隣の冷蔵庫を空けるとビールがハンダーズ置いてあるだけで食材と言う食材はひとつもなかった。 カカシの右手にはビニール袋が下げられてて、色々と買い込んで来た様だった。


「あの・・・・・・」
「待って待って。今からおかゆ作るから話はそれからしよう?」


ね、と念を押されてすごすごとベッドに戻る。これもカカシさんのベッドなのか、とはなんだかそわそわした気になった。 そしてキッチンではカカシがおかゆを作り始め、部屋にはいい匂いが漂っていった。



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20080220
(トリップスタート。ほのぼの甘めシリアス目指します)