僕だけに笑って 「なっ・・・・カカシさん、ここで一体何を?」 「んー?・・・・日向ぼっことか」 と、ゆるい表情で返答してきたカカシの体はずぶ濡れだった。日向ぼっこといえば確かに日向ぼっこもできないでもないが、今現在は天気雨状態だ。遠くには虹が見えて、太陽と雨の粒がきらきらと光る。 「は?」 「・・・・・・・本屋に行ってきたんですけど、あんまりいいのなくて」 「なんていう本?探しておくけど」 「カカシさんの手間をかけさせるほどの物ではないですよ。それよりも一緒に入りますか?」 「いーよ、濡れるでしょ」 もう少ししたらちゃんと帰るよ、とカカシは雰囲気をぼかして空を見上げる。は仕方なくしぶしぶといた表情で通り過ぎていった。そのまま一緒に送ってくれるのなら好都合だったが、彼女はこういうところは一歩ひくタイプだ。だから追いかけたくなるというか、捕まえたくなるというか――――押し倒したくなるとか。確かはフリーのはずだった、とカカシは思考をめぐらせる。かさが手元に無いから、帰るのはこの雨が上がった後になる。店前で雨宿りは少々体にきつい。 ―――――ま、ずぶ濡れだし。 しょうがないなぁと考え中の思考をほったらかしにして、カカシは帰路へとつく。どうせ濡れるのなら、同じだし時間がもったいないし。 「・・・・あーあ・・・・」 がっかりした声を出したのは自分ではなかった。カカシが振り返ると、が傘を差してそこに居た。もう片方の手には同じようなビニール傘がある。 「待ってるんじゃなかったんですか?」 「飽きた」 「簡潔な感想ですね。・・・・・はい」 どうぞ?と差し出された傘を一瞬ためらってカカシは受け取った。 「更に濡れましたね」 「洗うからヘーき」 「・・・・・灰色の猫みたい」 「猫、ね」 「おおきいやつ」 拾いたくなりますよね、と意味深な言葉をは言う。 「ね、」 「なんですか?」 「たとえば、好きな人が他のヤツに笑ったらどう思う?」 「どう、って」 「いらいらしたり。殴ってやりたくなったり。・・・・勿論、相手の方を」 「そんなわけ無いじゃないですか。カカシさんって意外と独占欲強いんですね」 「男は大体そういう生き物でしょ」 で、どうなの?とカカシが問う。 「好きな人が幸せならいいんじゃないですか?別に」 「?」 「自分とじゃ幸せになれないんだったら、好きな人のことを思って他の人に譲るのも必要だと思う、って話です。」 「欲が無いんだ?」 「そういうわけでもないですけど」 にっこりと笑う彼女のビニール傘に、雨のしずくが滴ってゆく。 「雨早くあがるといいですね」 「そーだね」 じゃあ、と手を振って彼女は去ってゆく。 ねぇ、いつか。 誰かのために笑うのではなく、 20080429 (何がしたいのかわかりません) |