嘘つきの日 「カカシ、さん」 「んー?」 えらく改まって珍しくが名前を呼びかける。カカシは愛読本から目をそらし、彼女を見た。 「どうかした?」 「いえ・・・・・その・・・・・」 歯切れの悪いの言葉は後方に行くとごにょごにょとしか聞こえてこない。ずいっとカカシは顔をの顔の近くにもって行くが、今度は逆にくっつかないでくださいと拒絶された。 「・・・・・深刻なハナシ?」 「やっぱりいいです」 話を切り出してみたものの、やはりなにかは隠しているらしくそこで話を切ってしまった。カカシはが疑いの眼でを見つめと、今度は彼女の方から目をそらした。 ―――こりゃ、何か隠してるな。 「・・・・・言わないと、キスするよ?」 「なっ、何ですかその脅し方は!」 「気になるから。・・・・・どうしたの?俺に頼み?だったら何でも聞くよ?」 「・・・・・ではなくて」 「なくて?」 だから何?と優しくも脅し口調で聞いてくるカカシを目の前に、はとうとう堰を切った。 「・・・・・わたしと、別れてくださいませんか」 「は?」 カカシが目を丸くしたのも当たり前だ。ついに言ってしまったとは完全に腰が引けている。カカシは遠慮なくの手首を掴んだ。そして怖いくらいにっこりと笑う。 「さん」 「な、なんですか?」 「その、の相手って誰?忍者?一般人?・・・・関係ないーね。俺のに手ぇ出すくらい勇気あるんだから俺に半殺しにされる覚悟も出来てるだろうからね。それ以上その男好きにならない方がいいよ、。明日には木の葉のリストから消えてるから。でも優しーの為に二択用意してあげる。半殺しにするのはもう決定済みだから、右半分殺すか左半分殺すか、どっちがいーい?・・・・・原型は留められると思うよ、それくらいの理性はちゃんと保つから」 にっこりと笑っていても、額当てで隠れていない方の瞳の殺気が何処かの誰とも解らないその男に向いているのがわかる。笑ってない。笑ってるけど、笑ってない。 「ちょ、・・・・!カカシさん!」 「それとも、その男と一緒に死ねるーってくれらい好きになっちゃった?俺、引き剥がす気満々なんだけど、その時は泣かないでね?全部の責任は、をたぶらかしたその男にあるんだから、俺はを怒らないよ。・・・・ま、軽いおしおきぐらいは覚悟しててもらえるとありがたいんだけど」 ね、と正気とも狂気とも取れない微妙な質問、否、尋問も返って来る。しかもいつの間にかカカシの顔がさっきよりもめちゃくちゃ間近に見えてきた。はストップ、とカカシの手を払って胸を押して何とか距離を保つ。 「カカシさん、わたしの言い分も聞いてください」 「いーよ。でもの相手についてののろけ話ならNGだーよ?今すぐ押し倒す勢いだから」 「・・・・・ですから、その、誰かを好きになったわけじゃなく・・・・・・ただ、カカシさんを好きじゃなくなっただけです」 は?とカカシは聞き返す。 「だから、」 「俺が嫌いになった?」 「嫌い・・・・まではいかないですけど、恋愛感情持てなくなったというか・・・・」 「要するに、俺を男として見れなくなった、てこと?」 「そう、ストレートに言われると困るんですけど」 それじゃあしょうがないよね、とカカシはあっさりと体から力を抜く。ほっとしてカカシから手を離すと、今度はの体ごと持ち上げられた。いわゆる、お姫様抱っこ状態で。 「待っ、カカシさん!下ろしてください・・・!」 「やだ」 まるで、おもちゃを取られた子供のように拗ねた返事がカカシから返ってきた。そのまま荒っぽくベッドの上に下ろされて、抗議の声を上げようと見上げると、口布と額当てを取った素顔のカカシが困ったような怒ったような顔で見下ろしていた。 「」 カカシさん、と慌てて名前を呼ぼうとすると、カカシの右手が左頬を覆い、口を塞がれた。そのまま右手もつかまれ、辛うじて左手でカカシの服を掴むが、カカシの体はビクともしない。 「・・・・・っ、・・・・あっ・・・・カカ、シ・・・さん・・・・っ!」 ついばむように、キスを落とすカカシへの反発はもう効かなくなってきた。目を開くと、カカシの長いまつ毛が近くにある。――――ただでさえも、心臓爆発しそうなのに。 「・・・・・」 名前を呼ばれて心臓がどくんと大きく波を打つ。そのままカカシは首筋に唇をはわせた。 「ちょっと、カカシさん・・・・・待って・・・・・!」 「やだ。・・・・俺が男として見れないんでしょ?だったら、素直な体の方に訊くしかないよーね?」 手を離そうとするが、力の差はこういうときでも歴然としている。カカシに押されれば、もう仰向けでベッドに倒れるしかない。――――ギブアップ。 「カカシさん、ストップ!!」 「なに?俺は止める気ないよ。ま、あがいてくれたほうがそそるけど」 「今日はっ、何月何日ですか!?」 ひとコンマ、間が空く。 「・・・・・・・エイプリル、フール・・・・?」 カカシの手が止まった。そのままうわやられた、とでも言いたそうに手を離す。 「ちょっと待って。てことは、全部・・・・嘘?」 「く、紅さんたちに脅されて・・・・・」 必死にひねった言葉はそれだけだった。昨日の飲み会で、愛情確認よ、などと半ば脅し文句同然の言葉をふっかけられ、あげくやらないとそれこそ浮気疑惑を噂として流すわよと紅以下、いつものメンバーに脅された。それだったら、こちらの方がまだマシだとは決意したのである。 「カカシ、さん?」 「・・・・・・あいつら後で殺す」 目がマジだった。 「・・・・・でもさ、」 「はい?」 「このまま終わるのも、物足りないんだーよね?」 カカシの腹に、の蹴りが入った。 20080402 (1日遅くなりましたが!自分的に糖度高め(・・・)) |