それだで十分





「カカシさん、心理テストをしましょう」


彼女がそんな事をいうもんだから、首をかしげてどうして?と聞き返す。心理テストの本を開きながら、彼女はパラパラとページをめくってストップする。勿論俺には見えない角度で。


「カカシさんのことが知りたいんです」
「そんなこと、になら何時でも何処でも何でも教えてあげるよ?」
「だって意図的に全部うまく丸め込まれそうなので。だったらいっそのこと心理を読む方向のほうが、いつものカカシさんを知ることが出来そうじゃありませんか?」
「ま、それもそうだとは思うけど、知りたいことあったら遠慮なく俺に言って?」


まぁ、その時はと曖昧に答えを濁して、のテストが始まる。こういうのは大体答えの予想が付くだろうがあえて言わない。それにもし―――勿論隠し事など無いつもりだが―――彼女の怒りにふれることを言ってしまう可能性もあるので慎重に答えることにしよう。


「次の言葉のあとに言葉を埋めてください。全部別の独立した文章で構いません。ちなみに数は5問です」
「んー」
「そのいちー、『水たまりは』」
「・・・・なんていうか、初っ端から答えの予想が付かない心理テストだね?」
「だってカカシさん頭いいから難しいのにしておかないと本当のことがわからないでしょ?」
「さいですか」


ここは直球がいいのだろうか。それにしてもは疑り深い。そんな隠し事もしてないのに。まぁ、探ってしまうってのも独占欲の象徴で嬉しいし、何より考えてる時間は彼女も側にいてくれるのでなるべく答えを引き延ばしたい。


「じゃー、水たまりは青い空を映す」
「・・・・・・・」
「なに、その間は」
「いえ・・・・じゃあ結果で、『『水たまり』というのは真実を映す鏡の象徴でもあります。水たまりをどうとらえるかによってわかるのは『あなたの本当の姿』です。』・・・・だって」
「へー、あたってるっぽい?」
「・・・カカシさんって空っぽいんですか?」
「や、俺に聞かれても」


困るんですけど。本当の姿は今ここにいる姿なんだけどね、さん。


「じゃ、次。『あの子って』」
「あの子って抱きしめたくなるよね」
「何でそこだけ即答なんですか?」
「んー?だってあの子ってなんかのこと差してそう。違う?」
「・・・・当たりですけど、これじゃ心理テストの意味ないじゃないですか。えっと、答えは『『あの子』これは他人を指す言葉ですね。他人に対する言葉は裏返してみれば他人の目に映る自分を意識する言葉でもあるのです。自分をつくろったり、よく思われたいと願う部分、これは『好きな人の前にいるあなたの態度』です。』ですって」
「うわ、その通り。抱きしめてい?」


露骨に嫌な顔をされた。そんなに嫌なの、と返すと不謹慎、と頬をつねられる。痛いけど嬉しいのでじーんとかみ締めると、の顔がちょっと赤くなって次いきますよと急かされた。照れてる照れてる。


「『今日の私は』」
「今日の俺はなんかに優しくしたい気分」
「・・・・・・・・わかりました」
「何が!?」
「答えです。『『今日の私』、『今日』とあえて限定すると、とてもあらたまった気持ちになります。でもそこには無理にとりつくろった偽りの心が含まれていることも事実でしょう。ここでは『ウソをついている時のあなた』が表れてしまいます。』・・・・・・優しくされてる時は嘘をつかれてる時なんですね」
「違う!断じてそれはないっ!」
「これからは気をつけます」
「違うから!俺そんなことしてないしするつもりもないから!」
「はいはいわかりました・・・・・」


最後のため息は何ですか。勿論嘘なんてつかないし、つくつもりもないのは事実。モトカノだってキッパリ別れたし、他の女友達だってあっさり捨てた。っていうと軽めの男に聞こえそうだけどそれぐらい愛してるし。


「つぎ、『すこしは』」
「すこしは、近づけたらいい」
「何にですか?」
「もちろん、の理想の男性に」
「ああ・・・・はい。わかりました。答えは『『すこしは』…出来なくてもいいからわずかでもいいから努力をしなくてはと、自分を叱咤激励するような気持ちをこめたこの言葉から導かれるのは、あなたのやる気、つまり、『今年の目標』なのです。』・・・そんな目標掲げてたんですね」
「もちろんー。やる気満々ですよ」
「それ以上はいいです、次」


何で!?と抗議をしても流されてしまった。昼間っからそんなことするつもりは無い、と思う。がしたいんなら別の話だけど。


「ラストです。『涙は』」
「涙はいらない。・・・・・でも欲しい」
「何ですか、それ」
の泣いてるとこ見るのも嫌だけど、泣き顔も可愛いだろうなぁって。うわどうしよう俺重症?」
「病院に行ってきなさい」
「つきそいで一緒に来てね?」


却下された。


「答えは『『涙』は喜び、悲しみ、感動とさまざまに揺れ動くあなたの心の代弁者です。大人への第一歩を踏み出した『初体験の時』の不安や喜びがここでわかります。』・・・・って」
「聞きたい?」
「いいです、聞きたくありません」
「初めてはが良かったなー、あ、でも下手だったからあんま良くないかも」
「だからっ、その話はいいですってば!」
「えー、興味ない?」
「ありません」
「俺は大有りなのに」


のこと、と付け足すと照れくさそう知りませんっ、と視線を逸らす。


「俺のこと、少しはわかってくれた?」
「・・・・・もう、なんか、余計にわからなくなりました!」
「えー、じゃあ教えてあげるよ、俺はが好き。愛してる。・・・・それで十分じゃない?」


・・・・勝手に言ってなさいっ、と噛みつくの態度がやけに可愛らしく思えた。









20080320
(カカシさん視点で。某所での心理テストバトンから)