我侭な型犬





「お帰りなさいカカシさん」
「ただいまー」


エプロンを着たまま、ドアが開くのと同時にお帰りを言いに玄関まで出てきたは、そのままたたたとまたキッチンに戻る。カカシが何か足りない、と首をひねってキッチンを追う。―――そっか。


「何作ってるのー?」
「お味噌汁です。これ作ったら夕飯できるからちょっと待っててね」
「うん。それもわかるんだけど」


ちょっと置いてこっち向いて、とカカシはの手からするりとおたまを取って、近くにある小皿のうえに置いた。な、何ですか、と早くも動揺を見せるに、カカシはにっこりと笑いかける。


「今日は言ってくれないの?『お帰りなさい!ご飯にする?お風呂にする?・・・・それともわたし?』って」
「今日はってなんですかっ!私、一度もそんなこと言った覚えありません!」
「えー、なんか新妻っぽくてよくない?俺そういうの結構憧れてるんだけど」
「カカシさんの事情は知りません。他の所でやってください」


言いかけのところで、中火にしてあった味噌汁が沸騰して音を立てた。は慌てて振り向いて火を止めて味を確かめる。それからお椀に2人分の味噌汁を盛り付け、後ろで眺めていたカカシに渡した。


「ふざけてないでこれ持ってってください」
「ん」


エプロンを脱いで、二人で向かい側のテーブルにつく。がほかほかのご飯を盛り付けて、相変わらずの夕食が始まる。


「今日は早かったですね、お帰り」
「ナイスタイミングだったでしょ?」
「ええ。お陰で美味しいご飯を食べる事も出来ましたし」
「・・・・・・何かあったんだとか聞いてくれないの?」


物欲しげにカカシが問うと、理由を聞いて欲しいんですかと冷めた目線が返ってくる。


「信頼されてるのは嬉しいけど、そこはこう・・・・痴話げんかっぽく?突っかかってきて欲しいっていうのもあるんですけど」
「じゃあ誰かと逢引でも?・・・・・別れましょうか」
「わー!待って待って!違う違う!どうしてそうは話を飛ばすの!」
「いや、この流れ的に別れ話を切り出すのかと・・・・・」
「ないない!それは絶対ない!」


必死にカカシが否定するのがおかしくて、思わず吹き出してしまう。


「最初にも言ったけど、俺から別れ話とかそういうの切り出さないから絶対。それぐらいのこと愛してるっていうことだよ?」
「・・・・・・・・・」
「ちょ、待って!何でそこで沈黙!?」
「カカシさんに羞恥心とかそういうものは無いんですか?」
「捨ててきた」


拾ってきなさいと真顔でが返すと、カカシはいらないよ、んなもんと白々しく言う。


「ま、は恥ずかしがってる時の方が俺は可愛いと思うけどねー?」
「それはいいですからっ」
「よくないよくない、超重要。は俺の何処が好き?」
「・・・・・・・・・・・」
沈黙禁止!!」
「いや、あんまり思いつかなかったので・・・・」
「そこは嘘でも言っておくとこでしょ?うわ、俺すごく今傷ついた」


じゃあ、ご馳走様、と何故かそこでカカシの夕飯タイムは終わり、綺麗に食べ終わった食器をキッチンに運ぶ。軽く洗ったあと、テーブルの横にあるベッドに腰を下ろす。はまだ食べてる最中だ。


おいで?」
「・・・・・は?」
「慰めて」
「・・・・・・・っ・・・・・だから!どうしてそう無茶苦茶を言うんですか!?」


愛ゆえだよ、とカカシはさらりとそこは受け流す。


「ね、、酷い事言ったんだよ?・・・・言ってないけど、正しくはした、かな?」

「ちょっと待って・・・・・ください・・・・・、私今食事中ですし、カカシさんは帰ってきたばかりでしょう?」
「ご飯は終わった。折角作ってくれたのだし。で、風呂かかの2択に迫られてた俺は、揺れながらも後者を取った、と」
「そこで納得しないで下さいっ」
「おいでー?」
「嫌ですっ」


断固拒否の姿勢を取るが、カカシの誘導は止らない。


「俺、拗ねたらけっこうウザいよ?」
「知ってます」
「・・・じゃあ、明日が話しかけた人片っ端からつぶす」
「何でですか!?しかも潰すって!」
「嫉妬心から来ます。・・・・最近ずーっとおあずけだった俺の身にもなって?」


ね?と押してくるカカシに、数秒考えてから、はゆっくりと腰を上げた。この我侭な大型犬には絶対勝てないのだろう。―――つぶすのも半分本気かもしれない。


「食器、カカシさんが片付けてくださいね?」
「もちろん」


あとは顔が真っ赤になった彼女を、ベッドの中に引きずり込むだけ。







20080318
(拗ねたら絶対言う事を気かなそう、な上忍)