コンプックス





街でカカシさんの噂を聞いた。
任務の成功率はほぼ100%、顔良し、性格良し、スタイル良し、将来性有り。やらせればなんでも超一流、手の届かない高物件だけどぶつかってみる価値有り、だそうな。


「へぇ、そんなこと聞いたの」


いつのまにかそんなことまで喋らされていたのは、何時もとの様子が違うとカカシが感じたからだ。 相変わらず優しい尋問で何で?どうして?と気が済むまで問い詰められる。 一段落した頃には、ほぼ吐かされている状態になり、しかし当のカカシ本人はの髪を触りつつじゃれながらあまり興味がない様子だった。


「他人の意見なんかどうでもいーの、俺は。それよりはどう思ってる?」
「どうって・・・・・、言われましても」


言葉が詰まる、というか具体的にカカシへの劣等感――コンプレックス――を抱いていないと言うのは否定できない。から見ればカカシは何でもできるスペシャリスト。抜け目の無い、ということを前提に含め。


「劣等感ね・・・・。ま、俺だって完璧なわけじゃないし」
「どこがですか?だって、何でもできるでしょう」
に弱い」


それだけはどうつつかれても痛いんだよねー、と半分冗談めかしながらカカシは嬉しそうに言う。カカシはソファ上に座り、は床に足を崩して座る。隣は何だか色々されそうなので遠慮する事にした。


「そんなもん抱いてなくたっていーよ。だって手を伸ばせば直ぐ届くじゃない」
「でもなんていうか、私ごときいいのかなーってのはありますよ?」
「・・・・・の方こそ俺なんかでいいの?」


へらへらしながら嬉しそうに、望んだ答えを待っているカカシだが、はさぁ、と一言でお茶を濁す。劣等感。コンプレックス。自分が他人よりも劣っていると思い込む意識。また、その時の不愉快な感情。それでもこの完璧な才人の隣でどう劣等感を持ち続けることなく、側にいられるのかがむしろ疑問なのだが。


「それに強い人間なんていないんだよ、もとから」
「自分の事は棚上げですか・・・・・」
「俺だってだからっていう弱点があるじゃない。人質に取られたら、何でもやるよ?」
「・・・弱みがあるのが弱い人間で、強みがあるのが強い人間じゃないんですか?」
「それは違うよ。弱みのない人間が強いんだーよ」


弱みのない人間が強い。強みがあっても弱みがあれば、そこをつつけば崩れるのと同じだ。 カカシは相も変わらずの髪をいじる。いつの間にか綺麗な三つ編みができていた。


「まぁ、そんなことどうでもいいんだけどねー」
「いいんですか」
「要は、が俺を好きでいてくれればいいってこと」


あぁ、なんだか上手い具合にくくられちゃったけど、結局カカシさんはそうなんですか。 予想していたが行き着く果ては同じらしい。劣等感を抱いていようがお互い好きあってれば構わない、と。


「だからそんな周りの話に流されないで?俺が寂しいでしょ」
「え?」
「周りの人に劣等感持たれてずっと暮らしてるなんて、こっちとしちゃすごく気疲れするってこと。だからお願いだけはそんなの抱かないようにして?」
「・・・・・・・それはお願い?」
「個人的な希望。みたいなー。ハイ出来上がり」


いつの間にかの髪の毛が綺麗に結いあがりカカシも満足げにそれを眺めた。 なんかの髪ってさらさらでいじりたくなるんだよね。そういえばなんでこんな長い時間掛かったのだろうと今更だが、もう遅い。


「あーごめん時間とらせちゃったね、仕事間に合う?」
「はい。ありがとうございましたー」
「いえいえどう致しまして。俺もこれから任務だし良い休憩になりました」


ここで暇つぶしと言わないのは、カカシ談、を暇つぶしになんか使うのもったいない、失礼、とのこと。 は立ち上がるとバックを片手に部屋を後にする。


「・・・・・行ってきます」
「いってらっしゃい。気をつけてね、







20080225
(今回は無駄に喋っていただいたカカシさん)