しおらしい





カカシさん今すぐ抱きしめて。
そう正面きって言ってみたら、カカシさんは目を丸くした。 読みかけのいつもの18禁本を開きかけたまま、こちらを天然記念物でも見てるかのような瞳で。


「ええと、さんもっかい?」
「だから、抱きしめて、って」
「抱いて、じゃなく?」
「・・・・・・・やっぱいい」


わー待って待って嘘嘘!と謝罪の声があがり、カカシは本を置いて座っていたベッドから立ち上がってを抱きしめた。 彼女のこんな要望は自分が聞く限り初めてで、それも自分が嬉しい事で、聞き間違いじゃないかと聞き返したがどうやら自分の頭は正常に機能している良かった、とカカシは抱きしめながら優越感に浸りつつ感じる。 の体は相変わらず自分みたいに筋肉質じゃなく抱き心地がよく暖かかった。 でも一体誰が、何が恥ずかしがりやでいつも引き気味の背中をここまで押したのだろう。


「・・・・・どうしたの?いきなり」
「嫌だった?」
「んーん、そんなことない。むしろ嬉しいーよ?」
「・・・・・・ちょっとね」


できればそこのちょっと、の部分を聞きたかったが、深く首を突っ込んで離れてと言われるのが怖かったのでカカシは黙ってを抱きしめる。 背丈は自分より低く、さらりと流れる黒髪が気持ちいい。


「・・・・・ありがと」


しばらく経ってから、もういいよの声がかかったのでしぶしぶカカシはの背中に回していた手を離し、切なげに見上げてくるを見下ろす。 うわやばいその表情たまんない、とか口にしたらシリアス感が台無しになるので口は噤む。


「大丈夫?」
「抱きしめてくれたから、平気」
「何か悲しいことでもあった?」
「・・・・・・・別に」


そこらへん気になるんですけどねー、さん、とカカシはもう一息押す。 こういうのには大抵理由があり、聞いて欲しい話があるという合図なのだ。 カカシがベッドに座ると、ちょこんとも隣に腰を下ろした。 噛み付いてくるも可愛いが、しおらしいもたまんない。


「・・・・・・カカシさんて、私の何処が好きですか?」
「え?どうしたの。イキナリ」
「ちょっとわからなくなっちゃって」


何が、なのかは良くわからないが、が答えてほしいなら答えなければいけないだろうと、心の中でカカシは自己完結。 の右手の上に左手を重ねてもは怒らなかった。


「一番なんて無いけど、順番にあげてくよ?可愛いところが好き。つっぱねても結局許してくれるが好き。疲れてるのにただいまってお帰りって言ってくれる所が好き。ちゃんと名前で読んでくれるところが好き。おんなじ目線で合わせてくれるところが好き。心配してくれるところが好き。実は妬いてくれるところが好き。結局は俺を好き、なんて思ってんのは俺だけ?でも全部ひっくるめて好き。一番なんて無いけど、嫌いなところも全部好き。後は鎖骨。とうなじとか。部分で言うと太ももとか腰辺りも好き。あと唇。嫌い嫌い言ってるけど、甘い声とか、」
「もういいです、それ以上話したら出て行きます」


話が何だかうやむやというか、好きな方向へと曲がり、から静止の言葉が入った。出ていかれるのは困るのでカカシは終わらせる。まだもっとあるんだけどな、と言うのは心の中でだけ。


「・・・・・まぁ、結局何が言いたいのかと言いますと、全部好きだから。俺に好かれてるってところは胸ははって自慢していーよ?」


ありがとうと、聞こえないぐらい小さい声で言われて、カカシはどう致しましてと返す。 久々にこんなを見る事が出来てカカシにとっても至福だった。


「・・・・・・今日、カカシさんと関係があったとある方に色々と言われまして」
「あー・・・・・それは、ごめーんね?」


本当に申し訳なくカカシが頭を下げてきた。 自分の所為じゃないのに謝る辺りが責任を感じているということがわかる。


「ちょっとだけ、不安になっただけです」
「じゃあいつでも言って?何回でも愛を囁くからー」


ばか、と照れて言ったの顔が本当に可愛いんだよね、とカカシは微笑んだ。






20080223
(カカシさんが野獣化してきて不安です)