遠近感覚 強引なカカシの言動には慣れたつもりでいた。 「ねー、夜も遅い事だし?泊まっていこーうよ?」 確かにカカシに都合よく引き止められ、いつの間にか窓の外は黄色から橙色、藍色から黒色へと移り変わってしまった。 夕食も済ませ、うだうだと気持ちよく寝そうなときにそう言われてはっと我に帰ったが時既に遅し。 金曜日だし、明日どうせ仕事ないでしょ、といつの間にかそんなことまでチェックされている。 「・・・・・・・・・・カカシさん」 「なにー?」 「何にも無い日なのに夕飯まで奢って頂いて、他国のお土産も頂いた所悪いんですが」 「ん?」 「何でそう私にベタベタくっつくんですかと聞いているんです!!」 気になっていたかと聞かれたら即答で肯定しても誰からも意義が無いくらいにカカシはベタベタと好きあらば髪だの手だのに触れようとしてくる。 は我慢の限界と思ってそう怒鳴りつけるがカカシはにへらと笑う。 「体を密着させなきゃいけない理由があるんですか!?」 「理由がないと触っちゃいけない?理由があったら触ってもいーい?」 「そう言ってるんではなくて!」 「て?」 「顔が近いんですってば!」 横を向かなくてもカカシの銀髪が間近に垣間見える。ベッドに座って、カカシが買って来てくれた今流行りのが好きな本を読んでいる時にいそいそとなるべく悟られないように寄りかかって来たカカシの事だ。きっと計算済み。流石にここまで寄られて、平常心を保って本を読んでいられる人間はまずいない。 「近くない近くないそれに密着してないよ?俺にはむしろ遠いくらいかなー」 「カカシさんの遠近感覚を疑いますっ」 「じゃあさーはどういうのが近いでどういうのが遠い?どこら辺がその境界?」 「半径1メートル以内であれば十分近いです!」 「そんなん遠いよ?」 何故かカカシが怒っているように思えた。苛立っている、の方が妥当だろうか。ぐいーと詰め寄ってきて鼻と鼻がこっつんこするぐらいの距離まで詰め寄る。とっさには手でカカシを追いやるが力の差は歴然。吐息のかかる至近距離でカカシのマスクの下の口が動く。 「どれだけ近付いてもはいつも遠いよ?適当にあしらわれてるって感じてないとでも俺が思う?あー、怒ってるわけじゃないよ。なんていうか確認?みたいな。はさ、何回愛を囁いたら感じてくれる?俺、めいっぱいのこと愛してるつもりだーよ。好きなところも嫌いなところも全部ひっくるめて。だからこんなに近くにいるのに」 遠くに感じてるのはどうしてだろうね、とカカシは切なげに視線を強くした。まるで足りないものを必然的に全て欲しがる子供のように。 「・・・・・・何かあったんですか」 「つまり、だ」 こっつん、とおでこを軽くぶつけられる。幸いにも、額あてだったので優しく音を立てるようにカカシが手加減してくれた。 「愛が足りない」 だからもっと頂戴と、またカカシは悪戯っぽく笑った。 20080220 (拾ったわんこには餌をくれないの?的なカカシさん) |